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ある秋の日。渋谷の雑踏で信号待ちをしていたユイは、メールの着信音に、慌てて大きな荷物を足下に置いた。
ようやく上着のポケットから携帯電話を取り出し広げる。 「なぬ?」 文面を目にした途端、眉間にしわを寄せた。 その時信号が変わり人波が動き出したので、ユイはそれを避けるように道ばたに佇むと、慣れた指使いで返信を打ち始めた。 To サチ Subject Re:ユイ、代返バレたよ。 …サチ~~~(┯_┯) 「代返しておくから行っておいで」ってサチが言うから、 今日の講義、気軽に休んだのにィ~~! ま、サチのその声と話し方じゃ絶対バレるなあとは思ってたけどね…。 結局、白金の物件はあんまり良くなかったし。 カウンターが狭いって、お姉ちゃん言ってた。 当面は店員はお姉ちゃんと私だけなんだから、 私はあのくらいあれば十分だと思うんだけどね…。 今から学校行くので、続きは後で詳しく話 「うぃ~~~っす、ど~も、うぃ~~~っす」 必要以上に黒い顔の少年が二人、無遠慮にユイに声をかけてきた。 「違います、違います違います」 会話にならない言葉を返し、ユイは彼らに背を向けた。 勝手の違う相手と諦めたか、少年達が去って行くと、 ユイは低く「ふん」と鼻を鳴らし、メールの続きを打ち始めた。 すね。渋谷怖い。 そうです何を隠そう今私は渋谷にいるのです! なぜ渋谷かといいますと…。 お姉ちゃんにさあ、カフェに置く椅子のデザイン頼まれてたって言ったっしょ、 もうすぐお姉ちゃんの誕生日だからさー、 その椅子のミニチュア作ってプレゼントしよっかなーと思って、 ハンズに素材を買いに来たのでした! ラッピング用品も買ったさー。かわいいよ~。 YUI☆彡 送信ボタンを押して、携帯をポケットに滑り込ませると、 ユイは足下の荷物を持ち上げて歩き出した。 「あ、すいません…すいません…あ、ごめんなさい」 駅が近付くと人の量もいっそう増す。 大きな荷物を持ったユイは人にぶつからずには三歩と進めない。 押し寄せる人波にヘドモドと揉まれていると再びメールが鳴った。 荷物を抱えたまま何とかポケットに手を突っ込むと、ユイは携帯を広げた。 To ユイ Subject Re:Re:ユイ、代返バレたよ。 私の声と話し方だとどうして絶対バレるのですか。 渋谷怖い、同感。ハンズなら傘の取っ手買って来て。折れちゃった。 「…なぬ」 ユイはくるりと向きを変え、駅に背を向けると、再び渋谷の奥深くへと押し進むのであった…。
by koisurumadori
| 2007-08-08 10:00
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