|
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
広葉樹は色が好き。
針葉樹はにおいが好き。 タカシに嫌いな物はない。 苦手な物なら山ほどあるが。 お父さんも好き。お母さんも好き。妹も好き。じいちゃんばあちゃんも好き。 山にいるのが好き。木を見るのが好き。木を触るのが好き。木のデッサンを描くのが好き木の勉強をするのが好き世界の針葉樹広葉樹を地域別に覚えて友達に自慢するのが好き。 彼の職場の人間は言った。 「大野先生、好きなこと職業にして幸せですね」 タカシもその通りだと思っていた。 ある日、苦手な物の一つを、タカシは好きになった。 その女はわかりやすく思えた。 あなたのお父さんも好き。あなたのお母さんも好き。あなたの妹も好き。あなたのじいちゃんばあちゃんも好き。 あなたと山にいるのが好き。あなたと木を見るのが好き。あなたと木を触るのが好き。あなたの木のデッサンを見るのが好き木の勉強をするあなたの姿が好き世界の針葉樹広葉樹を地域別に覚えて私に自慢するあなたが好き。 苦手なはずだったものを、この世で一番好きになった。 山よりも木よりも。 だけどうっかり、タカシはその思いを彼女に伝え忘れていた。 冬が嫌いなその女のために、冬花の鉢のプレゼントはしたのだが。 一緒に住むのは、ちょうどいいはずだった。 ちょうどいい空き部屋、ちょうどいい二人、ちょうどいいソファ。 好きな物と一緒の暮らし。 「―大野先生、言ってくれなきゃわかりませんよ」 タカシは我に返って男を見上げた。 「先生、緑色ELが足りないって、なぜすぐ報告してくれなかったんですか。 ・・・もう間に合わないかもしれない」 何気ない愚痴は、えてして真理を語っているものです。 「トゥルルルル・・・トゥルルルル・・・」 冬。女はなぜか電話に出ない。 ―どうしよう、もう彼女の嫌いな陽の薄い季節だというのに・・・。 彼女は大丈夫だろうか。 「わからないなあ・・・」 わからないことは、かなり苦手。 わからないので、タカシは待つことにした。
by koisurumadori
| 2007-07-26 17:07
| pre_story
|
Comments(0)
|
カテゴリ
検索
以前の記事
2008年 07月 2008年 05月 2008年 02月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 最新のコメント
最新のトラックバック
メモ帳
(c)「恋するマドリ」パートナーズ
フォロー中のブログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
Copyright ©1997-2007 Excite Japan Co.,Ltd. All Rights Reserved. 免責事項 - ヘルプ - エキサイトをスタートページに | BB.excite | Woman.excite | エキサイトホーム |
ファン申請 |
||