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【プレストーリー】アツコのこと   TEXT BY 大九明子
d0111057_2232387.jpgいつ無くなってもいいと思えるもの以外、
手元に置いておけない。
いつか無くなるかもと不安になるものは、
手元に置かない。
大事なものは、少ない方がいい。

アツコは全てを持っているはずだった。
一級建築士の肩書き。
若さ。
恋人。

でも実は、アツコはこれらのものを実感できたことが一度もなかった。
お気に入りの和菓子が、ほおばった途端消えてしまうのと何ら変わらない。

スーツ。
手作りの家具。
陶磁器の猫。
それくらいで十分だった。それ以上、持っていられない。

アツコは、鉢植えが心配で仕方がない。
枯れるんじゃないだろうか。枯れるんじゃないだろうか。

アツコは仕事が不安で仕方がない。
無くなるんじゃないだろうか。無くなるんじゃないだろうか。

アツコは、二十歳を超えたくらいからいつも、年を取りすぎてしまったとあせってあせって仕方がない。
もう無理なんじゃないだろうか。もう無理なんじゃないだろうか。

色んな不安を払拭する方法を、アツコは二つだけ知っていた。
その1。自分の中の目盛りを増やすこと。
その2。それでも溢れてしまうものは、捨ててしまうこと。

『カッコウ、カッコウ……』
アツコの携帯の着メロが鳴った。

アツコはまた、ニッコリと微笑みながら、溢れてしまった何かを捨てることにした。
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by koisurumadori | 2007-07-18 23:25 | pre_story | Comments(1)
Commented by マリアンヌ at 2007-07-19 19:25 x
今年28歳になります。
資格とか持ってないし、仕事は面白いけれど一生続けていけるか不安だし・・・
具体的な不安はないけれど、ぼんやりした不安がいつもある感じ、すごくよく分かります。
なんでしょう、この感じ。
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